アメリカの国道沿いの物語
ときどき、忙しい日常のなかでふと想像してみる。
そこはアメリカの片田舎。
国道沿いにはモーテルが2軒ほどならび、その少し手前には大きいけど地味なダイナーがある。
そして私はそのダイナーで働いている。ピンクと白のストライプのダサいエプロンをつけて。
昼間は、ただっぴろさだけが目立つ土地で、車が通るたびに砂埃が立ち上る。
変化なんて起こらなそうな場所だ。
何十年前も同じ光景だったのだろうし、もう何十年かあとも変わることはないだろう。
日が沈むと、その場所は表情を変える。
暗い道を走ってきたドライバーは、ダイナーの明かりに足を止める。
腹も空いたことだし、ここで食事をとるか。
ありきたりな、バンズがちょとへにょっとしたバーガーが出て、塩の足りないフライをたっぷりのケチャップに浸して平らげる。
甘いピンクのシェイクも背の高いグラスに入れてサーブする。
私は彼らに給仕して、ちょっとおしゃべりし、たまには暇すぎてうとうとしたりする。
窓の外を通り過ぎていく車の明かり、日が暮れかかる空、聞き飽きたぼんやりした感じのBGM。
自分がそこにいるような、いないような不思議な心地。
心だけは国道をどんどん遠くまで走っていく。
私はきっと、”Take me away” なんて思っているんじゃないだろうか。
華やかではない。少しばかり埃っぽいその場所。
そんな場所のことをいつも恋しく思っている。
そんな気分にぴったりの映画たち
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
2007年、ウォン・カーワイ監督 ( 香港/中国/フランス )
香港の巨匠の特色は、撮影がアメリカになっても失われなかった。
それどころか、おしゃれなNYの街に、ウォン・カーウァイ特有の煩雑した雰囲気を加え、監視カメラショットなども満載。
どこでも見たことがない街に仕上がってる。
私はこの幻のNYに住んでみたい。
『死ぬまでにしたい10のこと』
2003年、イザベル・コイシェ監督 (カナダ・スペイン)
ゆるふわ系ハートウォーミング映画かと思いきや。
意外なほどハードで、人生について考えさせる映画。
主人公はトレーラー住まいのすごく若い子持ちの女性。
ある日余命宣告を受けた彼女は、残していく家族、自分の人生を自分の存在を除いた視点から見つめようとする。
原題の My life without me がこのビターな彼女の人生を表している。
『リトル・ミス・サンシャイン』
2006年 バレリー・ファリス監督 (アメリカ)
みんな大好き、ほっこりロードムービー。
個人的にはアルバカーキー (Albuquerque)の発音が好き。
『あの頃ペニーレインと』
2000年 キャメロン・クロウ監督 (原題:Almost famous)
言わずと知れた、音楽映画の大傑作。
教育ママに育てられていた少年は、ある日、ローリングストーン誌の記者として駆け出しのバンドのツアーに参加することになる。
そこで出会った人々が、彼の夏を彩る。
この唯一無二のオリジナリティあふれるストーリーは、キャメロン・クロウ監督の実体験を基にしてるとのこと!
音楽に疎いので作中に出てくるバンド stillwater は実在するのかと思ってたんだけど、
実際には The Allman Brothers Band や Eric Clapton を骨格にイメージを作っているとのこと。
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