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香港映画 『贋札王 プロジェクト・グーテンベルグ』のあらすじ徹底解説

先日公開された香港映画 「贋札王 プロジェクト・グーテンベルグ」

©東映ビデオ

たっぷり楽しんできました!!
気がついたんだけど、香港映画ってガン・アクションやノワールが有名だけど、ストーリーが複雑なものが多い。
今作もご多分にもれず、で。

 

繰り返される映像は、毎度細部が異なり、俳優の入れ替えすら起こっている。
妄想と事実と嘘が複雑なレイヤーを成している今作。

・せっかく劇場で観たのに、ストーリーを追いきれなくて不完全燃焼な方
・展開を整理して答え合わせしたい方

それからもちろん自分のために筋書きを整理してみます。

ネタバレかと聞かれると、思いっきりネタバレなので、一度観た方におすすめです。

『贋札王 プロジェクト・グーテンベルグ』のあらすじ

85年 カナダ・チャイナタウン

主人公の絵描き【レイ・マン】は、恋人【ユン・マン】と同棲している。二人はプロを目指す貧しいアマチュアで、生活は困窮している。
そこへ現れるプロデューサーは、ユン・マンの絵だけを評価し、レイ・マンの絵は巨匠たちの筆使いを真似ただけだと言い切る。
ユン・マンは二人一緒でないとと食い下がるが、レイ・マンは自分の画家としての才能に見切りをつけ、よりお金になる贋作の仕事を始める。

※紛らわしいことに二人の名字は一緒だけど、おそらく結婚しているわけではなさそう。

85年 カナダ

しばらく距離をあけていたふたりだったが、ユン・マンの個展にレイ・マンは顔を出す。彼女は自分の作品の中にレイ・マンの絵を紛れ込ませてくれていた。
そこへ現れた紳士が、レイマンの絵を酷評する。ユン・マンは怒ってその人を追い出すが、レイ・マンは外に追いかけていって謝る。
紳士は怒ってなどいなく、実はレイ・マンをリクルートするために来たのだと言う。後日、レイ・マンは贋札の製造のためにリクルートされたことを知り、拒否反応を示すものの、参加することを決める。

贋札プロジェクトが始まる

コピーの際に出てしまう縞を避けるため、絵柄を手書きで複製、世界中を飛び回って実際のドル紙幣に近い紙の素材を探し、透かし模様の復元方法を模索する。
その中でインクだけは輸送中の本物を強奪することになる。死者多数を出し、大事件に。
レイ・マンは殺人を犯すことを断固として拒否する。

贋札が出来上がり、世界中に捌いていく。

滞在先の東南アジアっぽい国(なんとなくミャンマーとか設定?)で、車に使われている特殊インクをレイマンが発見。贋札にぴったりな色だった。
NASAが開発した技術が車の塗装インクに売られていることを突き止め、今後はそのインクを使うことに。
→結果、更に贋札のクオリティがあがり、なおかつインクのために強盗をしなくてもよくなった。
→レイマンはご褒美に画家からレイマン名義の南の島をもらう。

ここで出てくる鉄の掟が「制作した贋札は、絶対に自分たちでは使わないこと」
※面白かったのは贋札の相場。20:1と言っていたので偽100ドル1枚あたり5ドル。

●画家の敵討ち

ある日、取引の一貫でレイ・マンは画家に連れられて東南アジア(たぶんタイ設定?)の山奥に行く。
そこで画家の父の代からの友人マフィアに会うが、実は画家は父の復讐に来たのだった。
突然始まる銃撃戦。竹の建物はみるみる壊されて火の海に・・・
怯えまくって隠れていたレイ・マンは監禁されていた香港人?の女性シウチンを救出する。
チーム画家が圧勝。友人のアジトは火の海に包まれる。

●シウチンの入院

シウチンはひどい火傷を負っていたため、入院。ある程度回復した時点で顔の包帯を取り、当分の身分証明書としてパスポートを画家から渡される。その名義は「ユン・マン」となっていた。画家に食って掛かるレイ・マン。
シウチンは新しく贋札メンバーに加わった。
※シウチンの顔は火傷の痕はあるものの顔立ちはもとのママ

並行して走るサイドストーリー

●インク輸送車の襲撃事件を捜査していたカナダ警察のリー捜査官
この事件には贋札が絡んでいると確信、捜査を進める

●香港警察に出向してきたリー捜査官。喫煙所でタバコの火を貸した女性(ホー警部補)と同じ課に配属される。それとなく好奇心を寄せるホー警部補。

●リー捜査官は香港でも独自の調査を始める。香港の街中を見張っていたところを、画家に目撃される。

●リー捜査官はなんとか画家グループとの商談の糸口を掴む。
船で行われたパーティーにゲストとして参加、そこにはホー警部補が紛れ込んでいた。
ホー警部補をかばって飛び込んだ海で、通りかかった画家の船から本格的な商談へ誘う携帯電話が渡される。
                                   サイドストーリー閉

●船の中にて

画家が軽々しく人の命を奪うことに限界を感じたレイ・マンは、画家と対立する。口論の上、次の仕事が終わったらグループを抜け、シウチンともらった南の島に行くという。
彼らの乗った船は、上記のリー捜査官が乗った船を通りかかる。そこへ前出の携帯電話を投げるメンバー。
画家はリー捜査官の顔を認める。それはヤンの店の近くで見た顔と一致していた。「次の取引の相手はどこの出身か」と尋ねる画家。仲間がヤンの紹介で、カナダだと答える。画家は次の取引が罠であることを直感する。

●贋札工場にて

ある日画家が、古株の作業員ヤンを詰める。ヤンは偽札を自分たちで使わないという鉄の掟を犯し、自身が表向きの家業として営む骨董品屋の買付を、カナダで偽札で行った。
必死にかばうレイ・マンだったが、足が付いてしまった責任から粛清されるヤン。
なおも食い下がるレイ・マンは画家にグリップで殴られて気を失う。

●ホテル襲撃

レイマンが目を覚ますとそこはホテルの豪華な一室だった。仲間もすべてそこに揃っている。
やがてカナダのリー捜査官がやってくる。今回は少額の取引にし、次の大口取引をカナダで行いたいと申し出る。それに対して、画家はそろそろ廃業を考えていると伝える。だから型を売ることならできる、と。
捜査のための取引であり、現行犯逮捕したいであろうリー捜査官は逡巡する。そこで画家はレイマンに彼を始末するように言う。
それをすんなりと受け入れることなどできるはずもなく、このときにはかなり仲間割れが進んでいたことも見受けられ、仲間内で銃口を向け合うことに。(リー捜査官は撃たれて死亡)

●ホテルの奥

画家はさらに、奥の部屋を開ける。そこにはレイ・マンの元恋人ユン・マンとその婚約者のロクが目隠しをされ閉じ込めらてていた。リー捜査官を殺せなかった代わりに彼女を殺せという画家。レイマンはそれにも逆らい、画家に向けて発砲する。
味方であるシウチンの助けを借りて、ユンマンを守りながらなんとかホテルを脱出したレイマン。
ロクはその場で死亡。

●南の島

共に移住したであろうシウチンが買い物から帰ってくる。レイマンは彼女が隠していた新聞を読み漁り、画家がまだ生きていることを知る。香港に帰ろうとするレイマンを必死に止めるが、彼は出ていく。
旅行会社の受付で航空券の発行を待つ間に、現地の警察が乗り込んできて彼は逮捕される。押し込まれるパトカーの窓から見えたのは、手を振る画家だった。

●刑務所

タイの刑務所に入れられたレイマンは、工夫を凝らして手紙を書き、架橋の受刑者の手を借りてなんとか手紙を出すことに成功する。
その手紙が元になり、香港への輸送が決定する。

●輸送

空港から市内へ運ばれるレイマン。パトカーに乗っているのは、ホー警部補と運転手の警備員。じっとフロントミラーを見つめるレイマン。

●取り調べ

香港警察の取り調べ室にて、そこにユンマンが現れ、「自分がいかにして最愛の人を失ったのかを知る権利がある」という。ユンマンはその後、レイマンの供述に同席する。

●供述

ここからレイマンの供述が始まる。供述の内容は全て上記した通り。
最後にホー警部補は、画家の顔について尋ねる。それをもとに似顔絵が作成される。
ユンマンという身元引受人が現れたこともあり、レイマンは一時釈放される。

●逮捕

ホー警部補が喫煙室へ向かうと、亡くなったリー捜査官の亡霊が火を貸してくれる。一瞬はっとする警部補だったが、振り向くことなくその場をあとにする。(まじかっこよかった)
建物の戻る途中で、一人の警備員とすれ違う。その顔は、似顔絵の画家と瓜二つだった。
すぐさま包囲を敷き、警備員を追い詰めるホー警部補。取り押さえた人物は、似顔絵の人物であった。が、彼はただの警備員で、しかもレイマンの輸送を担当した運転手だった。
ホー警部補は、このとき初めて全てがレイマンの作り話であったことに気がつく。

●ホテル

まんまと釈放されたレイマンは、ユンマンとともにホテルの一室にいた。愛を交わす二人だったが、事後彼女が聞く。「抱いたのは私?それとも彼女?」
お前だとレイマンは答える。「偽物であっても、本物のように扱えば本物以上になる。俺のこの顔も知られてしまったし、整形でもするかな。今度はお前の好きな顔になるよ」
ユンマンの目にうっすらと涙が張るが、彼女はそれをこぼすことなく煙草に火を付ける。

 

真実の回想

〜回想が始まるが、ここからが真実〜

●上記してきたシーンが繰り返されるが、そこに画家の姿はなく、代わりにいるのは悪い奴バージョンのレイマンだった。

カナダで画家にリクルートされておらず、贋札は自分の意思で始めたことで、インク輸送者の凶悪な襲撃も主犯だった。惨劇となった山奥での復讐劇もレイマンの仕業で、なんと彼はそのとき救出したシウチンを、やけど治療とかこつけてユンマンの顔に整形していた。
ユンマン名義のパスポートを渡したのもレイマンが行ったことだった。

※2周目となるこの回想からは、シウチン役の俳優はユンマン役の俳優に取って代わっている。

ヤンを粛清したのもレイマン、取引に来たカナダのリー捜査官を殺したのもレイマンだった。

 

では誰がユンマンと婚約者を殺させようとしたのか。
それは、その頃にはすっかりレイマンに惚れ込んでいたシウチンだった。シウチンはユンマンと婚約者をホテルに誘拐して来ており、自分かユンマンかのどちらかを選べと言う。結果として婚約者は殺されるがユンマンは命は助かる。

レイマンはシウチンを連れて南の島へ。

島で逮捕されたとき、パトカーから見えた画家は、回想シーンではシウチンに代わっている。
シウチンは安全な暮らしと自分を捨てて出ていくレイマンを許せなかった。

シウチンは刑務所からのレイマンの手紙(似顔絵)を受けとったのち、香港の取調室に現れる。
つまり冒頭で取調室に登場したユンマンは、実はシウチンだった、ということになる。
引受人になり、ホテルにつれて帰ってきたのもシウチンということになるので、ホテルでの二人の会話の意味も通じる。

                                                                回想終了

●脱出

翌朝、ふたりはクルーザーで国外へ脱出する。がその最中でシウチンは運転を辞める。
実はシウチンはホー警部補に密告しており、警察に包囲される。「一緒にいないと意味がないと気がついた」と理由を語るシウチンは爆発物までセットしており、クルーザーは盛大に爆発する。
(シウチンは警察署でホー警部補のライターにクルーザーの車体ナンバーを残してきていた。)

●報告

しばらくのち、ホー警部補は本物のユンマンに会いに行く。彼女は婚約者を亡くしてからというもの、大陸の片隅で絵を描く生活を送っていた。レイマンが逮捕された旨を伝えると、ユンマンはあまり興味を示さなかった。そして言う。
「彼のことはよく知らない。ずっとむかしに隣に住んでいたというだけ」

▶実は最初からユンマンはレイマンの恋人ではなく、”恋心をつのらせていたただのお隣さん”という衝撃の事実が浮き出たところで映画は終了する。


改めて書き出して見るとすっごく複雑!みなさんの答えと合ったでしょうか。

この作品の面白さ、目をみはるような演出の工夫については次の投稿で!