日常で感じたこと

アメリカのお泊り会の定番ネタを詰め込んだ映画『アメリカンスリープオーバー』

私は青春を追体験させてくれる映画が好きだ。

特に自分に縁のなかった地域、クールなコミュニティー、ギークな人々、日本と異なる文化。

 

そういうものが出てくる青春映画に、永遠にあこがれている。

 

そしてこういう映画は、ローカル感がなきゃいけない。

 

そうそう、あそこにあの店があって、あのおばさんが住んでいて、みたいな。

知らない情報ではなく、どこか懐かしい、「初めて見たのに知ってる」みたいな気分にさせてくれるもの。

©Roman Spring Pictures

それでいうと、『アメリカンスリープオーバー』はドンピシャだった。

 

『IT FOLLOWS』『アンダー・ザ・シルバーレイク』の監督、デヴィッド・ロバート・ミッチェルの長編第一作目に当たる。

 

(余談だけど、『アンダー・ザ・シルバーレイク』はやばかった。陰謀論にとりつかれた主人公の話だけど、観客にはなんのヒントもネタバラシもなく、まともに観ていると大混乱する)

 

が、今作は、のんびりした雰囲気だ。

アメリカの片田舎。

ある夏の一日を、綺麗な砂浜の浅いところに座って、ぬるい波に足を浸していたら日が暮れてきた、みたいなテンションで描いている。

 

 

原題は、The Myth of The American Sleepover (アメリカのお泊り会のあるある)

 

Mythには、Weblioによると、社会的通念という意味がある。

この映画は、現代アメリカで大人になるための通過儀礼を、お泊り会を通して描いているとも言えそう。

 

 

そう思ったら気になってきて、ざっとそのmythの項目を洗い出してみた。

 

多分これはアメリカのお泊り会にまつわるお約束/あるある/定番ネタだと思う。

・家なのに寝袋
・新学期前にやってくる転校生
・彼氏奪われ事件 
・こっくりさん
・プールサイドでの煙草、ファーストキス
・当然水に落ちてびしょ濡れ
・頑張ってビールを飲む
・肝試し
・make out(いちゃいちゃ)デビュー!
・女子だけの空間に男子が訪問

 

15歳ぐらいで、人格形成のほぼ仕上げの時期でもあり、人間性の根底となる原体験が作られる時期。

 

いろんなものへのあこがれに手を伸ばすとのと同時に、自分にとって誰・何が本当に大事なのかを新改めて見出すような夏。

 

この定番ネタというのは元ネタというか、流れがある。自分ではすべて思い出せなかったのだけれど、こちらのブログにとても詳しく紹介されていた。

https://theriver.jp/ds-6/

『アメリカン・グラフィティ』(’73)
『すてきな片想い』(’84)
『セイ・エニシング』(’89)
『バッド・チューニング』(’93)
『アメリカン・パイ』(’99)

要約すると、この辺の映画がアメリカンティーンあるあるをよく描いている作品。

 

さらに詳しく知りたい方は、『ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて』(長谷川町蔵/山崎まどか)を読むとかなり理解が深まるはず。

 

 

少しだけ話をこの映画に戻すと

割とイケてる主人公マギーと、ザ・引き立て役な親友の組み合わせが気になった。

 

この二人が明らかに差がある存在として描かれているあたり、最近見たストレンジャー・シングスのナンシー&バーバラとそっくり。

金魚のフンは振り回される運命にある。(ときには命さえ失う羽目に。)

 

これって露骨にちょっとかわいそうじゃない?今後のこの手の映画では改善されるといいな。

 

それとハイスクールでは人気者だったけど、大学に行って転落してしまったと思っているお兄ちゃんの行動が不気味すぎ。

高校に忍び込んで、かつて自分に好意を寄せていた「らしい」双子を探す。

(区別もつかないくせに)

そこまでして自分の存在価値を確かめようとする。その一生懸命さが否定されないところはいい。

日本ではふつーに「きっも!!やば!!」って言われると思う。

それがないことが、優しさに感じた。

 

アメリカ映画は時々、厳しくない、思わぬ優しい価値観を教えてくれる。

『フリグズビーベア』はさらにその延長にある感じで大好きだった。

この手の”優しさ”が気に入った人にはおすすめかも。

©3311_Productions