先日、コスモポリタンジャパンのボディポジティブの企画に参加させてもらって、ものすごくエンパワメントされた私は、このいい流れに乗ってみようと思った。
そして向かったのは美容院。
抜毛症の人にとってなによりも憂鬱な場所ではないだろうかと思う。
大学生ぐらいから、美容師さんにやや不審な顔をされることが多くなって、年々足が遠のいていた。
頭皮が完全に見えるようになってからは、もう特殊な美容院しかいけなくなった。
最近一番良くお世話になっているのは、抗がん剤治療中の方などが行く美容院だ。
そこでも私はなにも言わなくても個室に通してもらえた。
そこではウィッグもカットしてもらったことがある。
美容師さんはとても上手だったけれど、私はどうしてもウィッグをつけていることに違和感があって、一度職場に付けていったらずれているんじゃないかと気が気じゃなくて、生きた心地がしなかった。
そしてウィッグをつけている感覚は、自分が偽物になった感覚のようでもあった。
あれ以来ウィッグは一度も付けていない。
この経験と、それからボディポジティブをより意識するようになって少し考え方が成熟した。
今の私の望みは、
- ウィッグは付けたくない
- いつも隠したいわけではないが、ジロジロと知らない人から見られたくもない
- =つまりは、できるだけ自然にでも今よりは目立たずに髪をおろしたい
という一見矛盾するなんともワガママなものだ。
でも私には算段があった。(昔から追い詰められると知恵がよく働くタイプなの)
ちょっとクィアな雰囲気の、フェミニンで無造作なヘア。
そしてかなり明るいカラー。
これをオーダーしようと思った。
前にインスタで見かけてとても気になっていた美容院に電話をかけた。
どんな美容師だって、なにも知らされずにこの頭を見たら驚くだろうと思ったし、それに事前に温度感を知りたかったというのもある。
歓迎されていないモードな中で、何時間も鏡に囲まれて座っていなきゃいけないなんて、できれば避けたい経験だもんね。
その人は電話口に出てくれて、私の説明を聞いたあと一度見てみましょうか、と言ってくれた。
これで最初のハードルは飛び越えた。
そしてその日の午後、震える手を押さえつけながら表参道へと向かった。
もっと髪があったときだって表参道の美容院なんかいったことない。行こうとも思ったこともなかった。
かっこいい自分に会いたい一心で、人ってこんなに行動できるのねと自分でもびっくりだけど。
入り口に到着して院内を覗いて緊張が増した。
そこは大きな鏡が乱立していて、全方位から自分の姿が見れる造りになっていたから。
私は自分の後頭部がずっと目に入ることになるし、他のお客さんからも見えてしまうだろう。
でもここまで来て引き返せない。腹を決めて扉を押した。
相談の結果、最初から考えていたブリーチからのカラーをしてもらえることになった。
所要時間:4時間。
耐えられるだろうかと心配していたんだけれど、結果大丈夫だった。
メインの美容師さん、アシスタントで入ってくれた若い女の人は「プロ」だった。
ジロジロみたりせず、抜毛についてもまったく触れないわけでなく必要なことは聞いてくれて、そして至極普通だったんだけどそれが心地よかった。
美容院の方、本当にどうもありがとう。
私は4時間鏡に向かって座りながら、緊張しなかった。
時々、鏡越しに自分の後頭部を見て、時々人からの視線も感じた。
前は濡れた髪のまま飛び出したくなっていたのに、そんなパニックの波は来なかった。
前よりも自分のことを受け入れられているんだと思う。
だって自分がどれぐらい髪を失ったのかを把握していなかったり、抜毛症であることを受け入れられずに他人から見られるのと、
自分の現状をきちんと知っていて(どれぐらい髪がなくて、何が根本的な原因なのか)質問されたら答えられるぐらいの気持ちでいるのとは全く違う。
だから人から見られることにも耐性がついたんだと思う。
私はここでも、自分が少し変化していることを感じた。
そして出来上がったヘアがこちら!
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私の算段というのは、髪が明るい/赤ければ、頭皮とのコントラストが黒髪だったときよりも軽減されて、自然に見えるのではないかということ。
この算段は大当たりだったんじゃないかと思うんだけど、どう?
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自分でもまだ見慣れないんだけど、一気にブラッシュアップされた気がして、とても気に入っている。
これを書いている時点であの美容院に行ってから1週間。
私はまだ一本も髪を抜いていない。