日常で感じたこと

新しい命を産む

To have or not to have.

What am I talking about? A baby.

 

子供の頃から、自分もいつか母になるのだと信じて疑わなかった。

うちの家は代々子供好きな人が多く、私と妹はたくさん遊んでもらって育ったし、年下の親戚が次々と生まれてからは自分たちが可愛がる側に回った。

小さいこと、幼いことは無条件にかわいい、愛おしいというのが共通した価値観だったように思う。

 

子供は2、3歳が一番かわいくて、4、5歳はなんだか面白いことを言い出してそれもまた愛らしく、6-10歳ぐらいは元気いっぱいで微笑ましい。
そんな風に思っていた。

Youtubeの「見るまえに跳べ」のゆうくんが可愛くて、ずっと見ている。
おかげでパンパースの広告が表示されるようになった。

 

子供と遊ぶのが好きだった。目線を合わせて、相手のよく要領を得ていない話や言葉に付き合うのはとても楽しい。喜びを感じる。
まだしゃべれない赤ちゃんを抱かせてもらったとき。笑いかけてくれたとき。 心が暖かくなる。

 

しかし私は、例えば10歳以上の「大きな子供」との付き合い方がよくわからない。
途端に喋りにくくなるし、可愛さをあまり感じない。

パートナーと話していたとき、私が
「子供は2、3歳が一番かわいいよね〜」と言ったら彼は真顔になった。

 

いわく、パートナーは10歳未満ぐらいの子供との遊び方がよくわからないらしい。
その代わり10歳以上の子供とは関わりやすいし、より可愛げを感じるのだとか。

「反抗期のクソガキや高校生の子供も可愛いの?」と聞いたら、
「自分の子供ならいくつになっても可愛いでしょう」と。

これだけのことだったんだけど、私は目から本当に鱗が落ちたかと思った。

身体が大きくなって、弁が立って憎たらしいことを言うようになっても、自分の好みと真逆の方向に子供が成長しても、かわいいものなの?

本当にそうなの!?

 

あまりにびっくりして、同僚や友人にも何人か聞いてみたら「そりゃそうでしょう」と皆が口を揃えたので、私はもっとびっくりした。

「幼い子どもが可愛い」という価値観の中で育った私は、いつのまにか、どういうわけか「幼くない子供=可愛くない」という風に変換して学習していたようだった。

 

でもさ、これって家の中だけではなく、世間一般にある風潮にもかなり含まれている気がしない?そう思うのは私だけかな。

何れにせよ、身近な人々の意見を聞いてみて初めて、自分は随分偏ったものの見方をしていたんだなぁと目が覚めた。

 

そうするとこれまでの自分が子供が欲しいと思っていたのは、ただ幼い子を可愛がりたかっただけなのではないかという気がしてきて、その残酷さに怖気が走った。
それってペットが買われる理由と同じじゃんか。

独り立ちしていく私たち姉妹を見た母が言った「もうひとり産もうかなぁ」という冗談と同じ種類の毒気を感じる。

 

そんな自分勝手な理由でこの世に産み落とされて、100年近くを生きなくてはならないなんて。
親が、当人以外が、そんなことを決めていいのだろうか。

 

子供を持つかどうかについて、これまでの自分の価値観を疑い始めた私は、深く考え込んでしまった。

パートナーは天使のように優しいし、私たちは若くて健康。条件は揃っているといえば揃っている。
でも何も考えず流れに任せていいような話ではないし。

 

頭の整理も兼ねて、ここに子供を持つ理由、持たない理由をリストアップしてみる。

 

子供を持ちたい理由 (Genaの考え)

・小さい子を可愛がりたい、お世話したいから
・自分たちのためだけに生きる人生はもったいないと思うから
(・親や親戚に孫の顔を見せてあげたいから)

素直に書いてみたらこんな感じ。

私の考えに加え、世間の人はこういう理由で生んでそうだな〜というのもリストアップしてみる。(偏見も入っているかも。)

子供を持ちたい理由 (一般的な考え)

・家の雰囲気が明るくなる、夫婦間のかすがいになるから
・「人並みの幸せ」が手に入るから
・親になってみたい、ライフステージをレベルアップさせたいから(自分たちの人としての成長的な?)
・パートナーが望むから
・パートナーを親にしてあげたいから
・パートナーと別れたとき、一人になりたくないから
・理解者、話し相手がほしいから
・遺伝子を残したい、家系を途絶えさせたくないから
・老後の面倒をみてもらいたいから
・なんとなく、当然の流れで
この素晴らしい世界を見せてあげたいから???

 

ただの「子供がほしい」というふんわりとした気持ちを、きちんと分解したらこんな悍ましいリストになった。
生まれてくる子供にメリットがまったくない。全部が親の都合だし、ペット扱いという気さえする。

それに怖いのは、上記のリストはあくまでわたしの考えではあるんだけど、これ以上の理由が見当たらない気がすること。

もしこういうのもあるよっていう意見があったらぜひぜひ教えてほしい。


 

今私の周りはまさにベビーラッシュで、日本が少子化してるなんて大嘘じゃん?って思う。

子供を生んだ友達にさりげなく探りを入れる。  「なんで生むことにしたの?」って。

正直、納得できる答えが返ってきたことはない。

 

作家の川上未映子さんも言っていることは真理だと感じる。

生きているわたしたちにとって、もっとも取り返しのつかないものはやはり「死」だと思うのですが、それは同時に「生まれてくるということ」の取り返しのつかなさからはじまっているわけですよね

川上未映子が話す。わたしたちはなぜ子どもを生むのか、生まないのか

 

100年近く生きることになる苦しい命を、どんな理由があったら産んでもいいんだろうか。

 

私は理性を総動員して、反対の理由をあげてみる。

 

子供を持たないほうがいい理由 (これはあくまで私の場合)

・現代の日本社会はあまりいい場所ではないと思っているから。
経済も政治も文化も教育も、十分に考えられ、個人が尊重されるような社会からはほど遠くて、そんな中で自由に生きよなんて、不可能だと感じてる。
ある国、社会の「生きづらさ」を数値化したかったら、出生率をみればいいとすら思うもんね。

・子供の性質が私に似て、生きづらい・働きづらい人間になった気の毒だと思うから
・自分の親のような親になりそうだから

・私から希死念慮が消えないから

 

 

親友には子供がいて、私は会う度にその子を抱かせてもらう。
楽しそうにしている私をみて、彼女は思うことがあったのだと思う。

Genaは子供が大好きなのに本当に産まなくていいの?
ある日の話の流れで彼女がそっと聞いた。

私は自分が親になるべきではないと思っていることを、上記した理由をいくつか話す。
反論せずじっくり聞いてくれたあと、彼女はこう分析してくれた。

Genaは子は親に似るという考え方をすごく強くもっているように思える。
多分、お母さんとの関係が密着していたから、そう思うようになったのかもね。
でも案外そんなことはないと思う。
親は反面教師にもなりえると、自分や周りを見ていてもそう思う。

 

その時の彼女の静かな声が、そのあと何日も耳に残った。

 

世の中には自分の恋愛感情を優先させる親や、出生前診断を受けてでも障害を避けたい、子供にはこの職業についてほしいなど、なりふりかまわず行動する親がいる中で。

何があっても子供は私が守る。どんな個性であっても肯定する。

彼女にはそう言い切れるだけの経験と思考と意思があって、私はそんな彼女を強く、美しいと思う。
彼女をお母さんに持てて、あの子はとてもラッキーだな。

 

正直、私も目が眩みそうになる。
ある日避妊に失敗してできちゃわないかな、とか片隅で思っている自分もいる。

 

こんなに苦しい命を、次へ繋ぐべきではない。

こんな苦しい命だからこそ、次へ繋ぐ価値がある?

 

私にはわからない。安易な真似はできない。

 

今週、甥が生まれた。