抜毛症

抜毛する自分を許すフェミニズム

自分の身に何が起きているのかを教えてくれる物語たち

日本で生きる、抜毛症やそれに近い心理の女性がこのブログを読んでくれたらいいなと思って書いている。まずは親和性が高いと思う3冊をご紹介。

他の人生に共感することで、自分たちの置かれている環境の問題やある意味での歪さに気がつけるかもしれない。「共感」というのは同じ沼にハマるだけでなく、そこから一緒に抜け出すための連帯でもあると信じてる。

『あたしたちよくやってる』(山内マリコ著)

 

あらすじ:齢、結婚、ファッション、女ともだち――いつの間にか自分を縛っている女性たちの日々の葛藤を、短編とスケッチ、そしてエッセイで思索する34編。(アマゾンより

Genaのおすすめ▶︎日常の延長的な、とても身近な内容なのでとても読みやすい。特に20代後半〜40代ぐらいまでの方はドンピシャな世代なのではないかと思う。私は山内マリコさんの書くものにいつも強烈なシンパシーを覚える。なんでそんなに、私がこれまで感じてきたことがわかるの!?ってびっくりする。ある面では自分の代弁者といってもいいかもしれない。この本の中にもまるで自分じゃないかと思うような主人公たちがたくさん出てきた。友達にも勧めまくり、何冊かプレゼントしたこともある。何人かはとても喜んでくれ、一人はまったく共感できなかったと言った。短編集だからまとまった時間がなくても開きやすいのも嬉しい。今手元にないのがとても悔しいところ。 (ちなみに私がこの本についで好きなのは『あのこは貴族』日本の今の感じを本当にうまく描き出していると思う。映画も素晴らしかったよ)

『夏物語』(川上未映子著)

 

あらすじ:大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。子どもを産むこと、持つことへの周囲の様々な声。そんな中、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていく。生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く、全世界が認める至高の物語。(アマゾンより

Genaのおすすめ▶︎こちらも現代日本で生きる女性たちの物語なのでとっても身近。そして大変ヘビーな内容であることをここに明記しておきます。主人公の夏子は母親になることを願っているものの、経済的にも身体的にもパートナー的にもとても厳しいと言わざるをえない状況に置かれている。なんとか母になる道を探そうとする夏子の前に、かつてのバイト仲間、片想いの相手の恋人、担当の編集者、作家仲間、豊胸手術をしたい姉、一言もしゃべらなくなった姪が出てきる。夏子だけではなく、さまざまな事情の女性の例がこれでもかと出てきて、そのあまりの濃厚さに面食らう。この小説に向かい合うのは、生きるのと同じぐらい大変。みんなが夏子に問いかけているかのよう。そんなに流れにさからってまで子供を産むのがいいことなの?反対にどうして自分だけの力で母になる選択をしないの?

子供を産むことが当たり前なのか。今の日本の社会で、結婚したり子どもを持ったり、家族を作ることの複雑さが表れていると思う。きつかったけど、読んでよかった。多分私の今後の人生に影響を与えるでしょう。なお、私はこの本の結末には納得いっていない。

 

『飢える私――ままならない心と体 』(ロクサーヌ・ゲイ著)

あらすじ:あの日の私を守るために食べてしまう。そんな自分を愛したいけど、愛せない。レイプ、過食、嘔吐、超肥満、差別、同情……。少女時代から作家になっても続く苦悩と辛酸の日々。(アマゾンより

Genaのおすすめ▶︎アメリカ、ハイチ系の家族に生まれた女性作家の回顧録。彼女の苦しみはティーンのころ、初恋の男の子に誘われて森に行ったところから始まる。その身に起きたことを、そのあと何十年もの間、彼女は誰にも話すことができなかった。深い傷と秘密を抱えた彼女は食べ始める。自分の体を安心できる「要塞」のようにするために。191センチ、262キロになった彼女は自分の体を要塞にすることには成功したけれど、行く先々で今度は体の大きさを気にするようになる。
始まりの大きな傷、それが引き起こした体の変化、交流関係、紆余曲折したキャリアなど、本当に赤裸々に書いていると思う。彼女の体験してきたことは凄まじく、簡単に共感したなどとは言えないのだけれど、私はこの彼女の物語を自分の物語でもあると強く感じた。自分で傷つけてしまった体への向き合い方やタトゥーのことも。ようやく長い迷路を抜け出した彼女の言葉には聞く価値がある。深く悩んでいる人にはぜひおすすめしたい。

こちらの投稿でも詳しく紹介しています▼
https://pieces-of-asia.com/roxanegay/

 

映画<ミレニアム>ドラゴン・タトゥーの女 

私がこの世で最も恐れていることの一つはレイプで、どうしてこの世から早くなくならないんだろうとよく考える。人の体は当人の同意がないと絶対開かないようにロックできる、とかいう機能はないのかね?21世紀ならできるんじゃないの?レイプを「魂の殺人」と言い表したフェミニズム的な表現は的のど真ん中を射ている。

 

あらすじ:ヴァンゲル一族が住むストックホルムの孤島ヘーデビーで忽然と姿を消した少女ハリエットの失踪事件。一族の重鎮ヘンリックは、姪の身に起こった真実の調査のため、雑誌「ミレニアム」のジャーナリスト、ミカエルを雇う。ミカエルは、調査員リスベットに協力を求める。背中にドラゴン・タトゥーを入れた彼女は、スウェーデン随一の天才ハッカーだった。
堅い殻に閉じこもって生きてきたリスベット。精神状態不安定という烙印を押され、後見人の保護観察下に置かれてきた彼女は、その頃、新任後見人の度重なる性的虐待に対し、想像を絶するような復讐を果たしていた。ミカエルとは、次第に心が通じ合うリスベット。ハリエットが日記に残した電話番号、生前の彼女を写した最後の写真・・・2人は、事件の真相に迫っていく。 (アマゾンより

Genaのおすすめ▶︎ちょっと毛色の違う作品を紹介したい。2012年に公開されたスウェーデンのサスペンス映画。小説を原作とする3部作。あらすじを見れば分かる通り、主人公のリスベットは性的虐待の被害者で、成人した後も後見人から搾取され続けている。直接的で見るに耐えられない暴行のシーンがあるので要注意なんだけど、なぜここでこの映画を紹介しているかというと、リスベットがどれだけ傷ついても決っして倒れない、不屈の女だから。権力の元に結託して好き放題してきた相手に立ち向かう。終盤、待ち望んだ裁判に向かうリスベットはめちゃくちゃパンクな装いで正装してくる。彼女は笑わない。自分のために戦う。

フィクションだけれど、彼女の強さの一部でも、この映画をみた私は現実に持って帰りたいといつも思う。
(ハリウッドリメイク版もあるんだけど、このオリジナルスウェーデンをぜひ推したい。)