抜毛症

BFRBとしての抜毛症 強迫性障害ではない?海外の抜毛症の最新情報まとめ

こんにちは!Genaです。

抜毛症に関する最新の日本語のデータってなかなか出てこないよねぇ。
メンタルクリニックとかのサイトに記述しているところもあるけど、情報のソースが明記されていなかったり、感覚的だったり、そのお医者さんの経験則が多い印象がある。

そもそも抜毛症をメインに研究しているところってあるのかしら。

まだまだ認知度の低い抜毛症だけど、英語ではちらほら耳寄りな情報も見かけたりするので、
今日はそういった最新情報、気になるニュースなどをまとめていきたいと思います。

このブログではこれまでにも、抜毛症の正確な定義というまとめた記事を書いていて、
こちらは留学中に入手したアメリカの心理学の教科書から抜粋してきた内容のまとめになってるよ。

抜毛症の正式な定義
私がはじめて正式な文献を見つけたのは、留学先のアメリカでの心理学の授業でのことでした。 精神障害として登録されていること、教科書にかなりのページが割かれていることにびっくりして、恐る恐る読みました。 ちゃんと知りたいような気もするけど、現実を突きつけられるのが怖かった。 緊張しながら辞書を引きました。

よかったら合わせてチェックしてね。

National Library of Medicineによる抜毛症の定義

まずはNational Library of Medicineというサイトで抜毛症による定義を参照してみた。
MSD-5より詳しかった印象。

抜毛症の定義、背景、有病率について

  • 抜毛症とは、自分の髪の毛を繰り返し引き抜き,脱毛や機能障害を引き起こすことを特徴とする
  • 19世紀から医学的に報告されてきたが,これまでほとんど研究されてこなかった。
  • 0.5〜2.0%の有病率を持つ一般的な疾患である
  • DSM-5では強迫性障害に分類されていますが、臨床家は、抜毛症と強迫性障害の共通点が当初考えられていたよりも少ない可能性があると指摘している

参照 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27581696/

  • 抜毛症の疾患は未治療の場合、慢性化する可能性がある。
  • 抜毛症は個々の患者にかなりの負担を強いる。
  • 社会的な孤立や、身体的・精神的な合併症の出現と関連していることが多いが、研究への投資、特に薬物療法の分野への投資はかなり限られている
  • 7〜8歳の子供を対象とした無作為化比較試験では、認知行動療法が75%の参加者の症状を軽減することがわかった。

参照 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27320510/

新説!?身体反復集中運動としての抜毛症

身体反復集中運動ってあまり馴染みがない言葉だけど、【身体に焦点を合わせた行為)を繰り返し行うこと】のことで、具体的な例としては爪を噛む、唇を噛む、頬を噛むなどがある。

英語では body-focused repetitive behavior disorder で、略してBFRBと言われてるみたい。

アメリカのBFRBの大手団体The TLC Foundation というところがあり、インスタでもかなり積極的に情報発信をしてる。

そこが出しているとても充実した報告書があり↓、特に興味深かった内容を抜粋してお届けしようと思います。

 Expert Consensus Treatment Guidelines Body-Focused Repetitive Behaviors Hair Pulling, Skin Picking, and Related Disorders (2016)

なおすべて英語からのGena意訳なので齟齬があったらごめんネ。

グルーミングとは? (p4)

  • BFRBとは、繰り返し行われるセルフグルーミング行動の総称です。(グルーミング=直訳で毛づくろい)
    例えば、髪の毛・皮膚・爪などを引っ張ったり、つまんだり、噛んだり、引っ掻いたりすることで身体にダメージを与える反復的な行動を指します。

  • 最も一般的な2つの BFRBは、トリコチロマニア(抜毛症)とエクソリエーション(皮膚摘出症)の2つが代表的です。その他には、、皮膚(かさぶた、にきび、その他の皮膚の欠点など)、キューティクルや爪、唇や頬などをつまんだり噛んだりする行為もBFRBの行動としてよく見られます。

  • 通常のグルーミング行動とBFRBの違いは、その行動が個人的に大きな苦痛を与え、日常生活に支障をきたす場合に生じます。 

 

BFRBの原因は? (p7)

  • なぜこのような行動をとる人と、とらない人がいるのかは不明です。
  • しかし、人によっては遺伝的要因を持っているかもしれないという研究結果があります。
  • いくつかの研究では、皮膚むしりや髪をひっぱる行動をしている人の近親者には、一般の人よりもBFRBの数が多いことが示されています。
  • また双子の研究では、一卵性双生児と二卵性双生児の間で、抜毛症の発生率に高い一致性があることが示されています。
  • BFRBの一部または全部が遺伝子に由来する可能性を考慮して、研究者たちは現在、BFRBに罹患している人々の遺伝子を研究し、より効果的な治療法につながる可能性のある遺伝子マーカーを分離しようとしています。
  • なお、BFRBの素因が遺伝したとしても、気質や環境、発症年齢、家族のストレスなど、他の要因が絡んでいることもまた確かです。
  • 抜毛やスキンピッキングは霊長類でも、自分の毛皮や他人の毛皮についたダニや虫を取るために見られる行動であります。
  • 動物研究者たちは このような動物の似たような行動を理解し、その背景にある複雑な神経生物学に光を当てようとしています。動物研究者は、このような動物の類似した行動を理解することで、人間が経験するBFRBを支える複雑な神経生物学を解明しようとしています。

BFRBはその人に深い問題があることを意味するのかどうか (p8)

  • 抜毛やスキンピッキングは、何か解決されていない問題の兆候であると考える人もいます。
  • しかし現在の証拠では、これらの行動は一般的により深い問題や未解決のトラウマを示すものではないことが示唆されています。 

抜毛やスキンピッキングは自傷行為かどうか (p8)

  • BFRBを行う人はストレスを解消したり、満足感やその他の感覚を得るために行います。
  • これは故意に傷つけたり、罰したり、耐えられない感情を紛らわせるために自傷行為を行う人とは対照的です。
  • このようにBFRBは自傷行為の一形態ではなく、別の独立した障害であると考えられる。

BFRBの治療法について  (p9)(p19)

  • BFRBの治療には、認知行動療法が選択肢の一つで、薬物療法よりも効果が高いとされています。しかし人によっては、まず薬物療法が必要な場合や、併用が必要な場合もあります。

【認知行動療法】
問題のある思考、感情、行動を特定することに焦点を当て、これらの要因を変える治療法です。
個人の症状に合わせた治療を行うことにも重点が置かれています。

  • 行動変容は、時間がかかるものであり、前進と後退の両方を伴うプロセスである。
  • BFRBの治療が成功したとしても、スリップ(揺り戻し)が起こることは普通なことである
  • 治療は問題を完全に解決するような奇跡的な治療ではなく、ゆっくりと着実に改善していくものであることを理解することが重要である。
  • いったんBFRBが発症すると、かなりの期間寛解した後でも再発する可能性があることを認識することが重要です。

 

私は上記にあげた点がどれもすごく自分の身に当てはまるなと思った。

過去をどれだけ掘り起こしても深刻なトラウマと言える事象は経験していないし、自傷行為のつもりで髪を抜いているわけではない(抜きすぎてこれは意味合い的には自傷だよなと思ったことはあるけど)、抜毛行為を除いても毛づくろいのような行為は結構好きでもある。

私は孤独な星に住む一匹の猿で、毛づくろいしたいけどお互いにしあえる相手もおらず、寂しくて寂しくて仕方なく一人で毛を抜いている。

学校や仕事みたいな表面的な活動はあるけど、それは私を人間にしていない、感じ。
本当の仲間が、家族がほしい。

抜毛症の子供は孤独なんじゃないかなぁ。

 

思考を制御するための抜毛行為

私は20年近く、いろんな理由や条件のもとで抜毛をしてきたんだけど、勉強をするときや、特に論理的な思考をしなくてはいけないときにほぼ100%髪の毛を触っていた覚えがある。

髪を抜いているうちに乖離してぼんやりして、もちろん課題が進むわけもなく、時間だけが経っているということを学生時代、社会人になってからも繰り返してきた。

論理的な思考が苦手なので逃避しているんだと思うんだけど、それと抜毛症とは関係があるのかなとずっとおもっていたところ、日本精神神経学会専門医で、パークサイド日比谷クリニックの立川秀樹院長の記事を見つけた。

2020/6/15 Edu A 『まゆ毛やまつ毛、髪を抜く原因はストレス? 子どもの「抜毛症」を正しく知る』

「衝動や思考を制御するために意図的に行う自覚型と、何かをしているときについ行ってしまう無意識型、二つの型があります。さまざまな要因が関わっており、原因不明なケースも多いのですが、4分の1以上はストレス状況と関連していると言われています」

「思考の制御」という表現はあまりにもぴったり言い当てられていて、まさに!と思った。
これは先生の肌感なのか、データがあるのかな?あるならぜひ見てみたい。

 

もう一つこの記事の中でなるほどと思ったのは、なぜ抜毛行為がストレス発散の手段になり得てしまうのか、という点。

「子どもの場合、小学生から高校生までは自分で環境をコントロールできないケースが多いのです。住む場所も選べないし、親の都合で引っ越しすることもある。学校のクラスも1年間変わらないから、友人関係が悪化しても、理不尽な目に遭っても、同じ環境で過ごさなければならない。大人になると転職や独立という選択肢が出てきますが、子どもはそうはいきません。コントロールレスの環境下で不安を抱えた子どもが“自分でコントロールできること”の一つとして抜毛があります。抜こうと思ったら抜けるということは、努力に対する報酬が必ずもらえる行為なのです

 

特に抜毛症のお子さんのいる方にぜひ知ってもらいたいと思ったのは下記のポイント。

  • コントロールできない状況で、逃げ出したいけれど逃げ出せないという子どもを治療する場合、原因の根本を探し出して環境的に問題を解決しなければいけません。そもそも、子どもは経験が浅いため、ストレス耐性が低い。ですから、受け止めがたい現状から逃がしてあげるのが最も有効です。
  • 避けてほしい保護者の対応として、やみくもに叱って抜毛行為を止めさせること。ただクセで抜いている子どもならよくても、受け止めがたい現実から逃げるために行っている場合、逃げ場を閉ざすことにつながります。

当事者として本当にそうだと思うから、親御さんにはぜひこの点を気をつけてもらいたいな。

 

 

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